長月廿日の比(ころ)、ある人に誘はれてたてまつりて
明くるまで月見ありく事侍りしに思し出(い)ずる所ありて
案内せさせて、入り給いぬ。
荒れたる庭の露しげきに、わざとならぬ匂ひ、 しめやかにうち薫りて、 忍びたるけはひ、いとものあはれなり。
よきほどにて出(い)で給ひぬれど、なほ、事ざまの優に覚えて 物の隠れよりしばしば見ゐたるに、妻戸をいま少し押し 開けて月見るけしきなり。 やがてかけこもらましかば、口をしからまし。
跡まで見る人ありとは、いかでか知らん。 かやうの事は、ただ、朝夕の心づかひによるべし。
その人、ほどなく失せにけり聞き侍りし。
*徒然草...第三十二段 長月廿日のころより* 吉田兼好
いにしえの人もまたこの月の美しい季節を特筆し、 9月20日と日時も明記して書き記しているのが
、 なんとも愉快というか楽しく感ずる。 今よりは過ごし易かったと想像できるが、暑く湿度の高い夏を、 ようやく乗り越え涼風が爽やかな
秋の夜に、 仰ぎ見る月はやはり当時の人々にとっても 特別に美しく見えたことだろう...。
今年は9月18日が中秋の名月。各地で秋祭りも開催されると聞く。 さて、どんな表情を今年の月は
見せてくれるのだろう…
想像するだけで何かわくわくとしてくる。
秋の夜の月の光しあかければくらぶの山もこえぬべらなり
在原元方
久方の月の桂も秋はなほもみぢすればやてりまさるらむ
たゞみね
月みればちゞにものこそかなしけれ
わが身ひとつの秋にはあらねど
大江千里
*古今和歌集 巻第四 秋歌上より*
*Love is sent to you from Eruze♪mintmamu*
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